いたいのいたいの とんでいけ の魔法

こんにちは。
臨床発達心理士のChikaです。

今日は、街中で目にした とある光景から。

 子どもが転んだ!そのとき…


街中でお母さんと一緒に歩いていた2歳前くらいのお子さんが
ばたーん!っと転びました。

お母さんはすぐに言いました。
「痛くない!」「強い!」

お子さんは「痛いよー」と半泣きだったのですが
「痛くない!強い!」
とお母さんが何度も力強く言うので
そのうちお子さんは涙をぐっとこらえて、
何も言わず立ち上がって歩き始めました。

その姿をみて、お母さんは
「強いね!えらい!」と褒めていました。

 いろんな「もしかしたら」

この親子の姿を見て感じることって
人によって本当に様々なのではないかな
と思います。

もしかしたら、このお母さんは
「強い子に育てたい」
という思いがあったのかもしれません。

もしかしたら
ちょっとのことで甘やかしちゃいけない」
という思いもあったかもしれません。

もしかしたら、「大丈夫?痛かったね」と言うと
いつも大泣きになるから、
それは街中ではさけたくて
あえてそのような言葉がけをしなかったのかもしれません。

…こんな風に
保護者側のいろんな「もしかしたら」が
きっと考えられますよね。

 感覚を知る・学ぶ時期 


今回は
この場面においてお子さんが感じた
「痛い!」という「感覚」の視点から

言葉がけのお話をしたいと思います。

小さなお子さんは
自分自身が感じている感覚の名前を
周りからの言葉がけによって学んでいきます。

「痛かったね。」と声をかけられて
「あぁ、この感じが『痛い』というんだ」
と覚えていきます。

そして、「痛み」への反応での「泣く」は
自分を守るためのものでもあります。

「痛い」と感じることができないと
大きなケガにもつながっていくので
大事な感覚です。

体に何かしらの不快感があって
まだ上手にその感覚を言葉にして伝えることができない子ども達は
「泣く」という形で必死に表現して
伝えているのではないでしょうか。

だからこそ
「今のその感覚はこういうことだよ」
と伝えていくことが必要な時期があります。

冒頭の言葉がけがいい・悪いということではなく
感覚を学ぶ、という視点から考えると
お子さんが「痛い」という状況や表情のときは
まずはその感覚を否定せずに受け止めて言語化することが大切ということを
知っておいてもらえたらなと思います。

 いたいのいたいの とんでいけ 


ただ、ずっと
「痛いよー」と泣き続けられたり
何もなっていない(ように見える)のに
「痛い痛い」と言われると
なんだかなぁ、と思う方もいるかもしれません。

そんなときの魔法の言葉が
「いたいのいたいの  とんでいけ」

子どもの「痛い」という部分は受け止めながらも
ほんのちょっと
お子さんの気持ちを気持ちや視点を変えることができるのが
この言葉の効果。

ちなみに私は子ども達に
「いたいのいたいの〜ぱくっ(食べるふり)…食べちゃった!
なんてこともしたりします。

そうすると
びっくりしながら私のお腹をじーっと見つめたり
「先生のおなかは大丈夫?」
と心配してくれる子もいたりします。

「大丈夫だよー」なんて会話をしているうちに
子どもの気持ちも切り替わっていることも。

 おわりに 


転ぶとすぐに泣くお子さんを
「泣き虫・弱い子」
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが
「痛かったね」
と共感される経験をしていったお子さんは
他者の痛みに共感し寄り添える強さをもつ人になるかもしれません。

そして
冒頭の「いろんなもしかしたら」に書いたような
「強い子になってほしい」
という思いが子育ての軸の中にある方は
「何をもって、強い子なのか」ということを
ふとしたときにでも
改めて考えてみていただけたらなと思います。